「こんにちは」
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「久米くんやろ??」
最初の挨拶から・・・
20秒ほど経ち・・・
そしてようやく名前を呼んでくれた。
オレも・・・奥様も涙目になった。
今回の大阪旅行・・・・
家族全員で・・・
大阪の修業先を訪れようと計画していた。
毎年
盆暮れの義理と年賀状ではご挨拶をしているが・・・
18歳から20歳まで住み込みでいろいろと教えてもらった修業先・・
これまで一度も修業先を訪れたことは・・・なかった。
いや・・結婚が決まった年に一度だけ・・妻と訪問はしているが・・
それも12年も前の話である。
そのときは・・奥様はたまたまお留守だったのでお会いしてはいない。
奥様とは・・20年ぶりの再会だ。
「久米くん・・・よう肥えて・・・」
20年ぶりの再会なのに・・感動の言葉がこれであった・・
アポなし・・突然の訪問・・・
奥様は「よう来たなぁ・・よう来たなぁ・・」目を真っ赤にして・・向かえてくれた。
「にいちゃ」と呼んでいた・・社長も二階の事務室から降りてきた。
おいらの結婚式で来賓として祝辞を述べてくれた社長・・・
「久米くん、えらい久しぶりやなあ・・よう肥えたなぁ・・」
なんなんだ・・・この夫婦は・・・
どっちも第一声が・・「よう肥えたなぁ」ではナイか・・・
でも・・・奥様との20年ぶりの再会は本当に懐かしかった・・
「奥様・・いくつになったの??」
「あたし??・・あたし・・今62・・」
ということは・・ちょうどいまの俺たちくらいの年に・・18歳くらいの研修生を6人も預かり・・・そして晩ご飯のお世話までしていてくれたのだ。
改めてアタマが下がる・・・
妻と子供達は2階の事務室へ・・
おいらは奥様と・・店の中で雑談・・・
奥様が・・
「みんなから年賀状いただくけど・・酒屋やめてしまった子もいれば・・・おくさんと分かれた子もいてんのよぉ」
「久米くん・・いまどき・・・酒屋の奥様として・・あんなに笑顔でいてくれる奥さんはないでぇ。奥さん・・大事にしたってや」
もう・・・奥様もおれも涙・・・ぽろぽろ
「しっかし・・・ほんまによう肥えて・・・」
あの・・・もうそのハナシはいいですから・・
事務室で・・社長と対談。
「久米くんとは・・今宮のえべっさんに二人で行ったなぁ」
「久米くん・・まだ・・エール出来るか??声出るか??」
どうでもいいような・・とりとめのないハナシしか出ないのだけど・・なんだか嬉しい
電車の関係もあって・・滞在時間はわずか・・30分であった。
「なんやの・・久米くん・・愛想ナシやなぁ」
奥様からは・・もっと遊んでいけと言われたが・・つぎの待ち合わせがあるので・・と言うと・・
「愛想なしやなぁ・・愛想なしやなあ」と何度も言われてしまった・・
帰り際・・・社長が・・
「ぼくとお嬢ちゃんにお年玉」
といきなり・・ポチ袋。
突然の出来事に驚いた。
「そんなん・・にいちゃ・・困りますよ」
「よう来てくれた・・ほんまによう来てくれた」
社長も奥様もうれしそうであった。
遠慮なくお年玉はいただいた。
帰り際・・「久米くん・・奥さんを大事にしいや。いまどき酒屋をニコニコとやってくれるお嫁さんはいてないでぇ・・大事にしいや」
奥様は最後まで・・うちの妻に気遣ってくれた。
もしかしたら・・・子供を連れて・・修業先に顔を出すことは・・・
これで最初で最後かもしれん・・・
本当に顔を出してよかった・・
20年前に・・戻ったような感じがした。
そのときの成績は・・あまり優秀なものではなかったが・・・
出来の悪いこほど・・・可愛い・・ということか・・
「久米くん・・よう肥えたなぁ」
を・・連発されたおいらでした。